伝心投書箱

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【書評】終わる世界のアルバム

タイトルとカテゴリに書評という二字を入れましたが、ただの本の感想です。

そもそも私は決して本を読む方ではなく、一月に2冊も読めば多いほうです。
そんな私がどうして書評なんてブログに残そうかと思ったのかというと、過去読んだ本を殆ど覚えていないということを身にしみて感じたからです。
というわけでここに読んだ記録として残していこうと思います。いつまで続くかわかりませんが。

終わる世界のアルバム

一番最初の本は杉井光さんの「終わる世界のアルバム」です。ライトノベルにカテゴライズされるのだとは思いますが、表紙以外の挿絵はありません。

mwbunko.com


amazonによると私は2016年12月19日にこの本を買ったようで、一度読んだ記憶があります。当時「感動した」ということも覚えています。が、最近になってこの本をKindleの中で掘り当てたときに中身をまったくもって思い出すことができませんでした。

この本の主人公がそうだったように、自分の心からポッカリとこの物語が抜け落ちていました。



「消えてないよ。だって、まだ憶えてるよ。DJサトシ」
「憶えてるのは、名前だけでしょ」



この世界は死ぬという概念がなくなった世界。
人は死ぬことなく突然姿が消える。その人の生活の跡も、人々の記憶も消えてしまう。例えばおじいさんが消えてしまったら、おじいさんのために毎日弁当を作っていた娘は毎日猫に食べ物を与えていたことにされる。消えた人がいたことさえ無かったことになる。
そんな残酷な世界の中で自分だけが消えた人を覚えていられることができたなら、自分は正気でいられるだろうか?

主人公は卒業を控えた中学3年生の男子。
フィルムカメラで撮った人間は消えてしまっても記憶から抜け落ちないことに気づいていた彼は、人が消えるたびに写真を墓標代わりにする日々を送っていた。誰かが消えていないかを確認するために教室の机が28個あるかどうか確認して、消えていればその人の写真に名を刻み、「(悲しくない)平気、平気」と言い聞かせる。そんなある日、机が29個あることに気づき・・・

というのが私が書くこの本のあらすじです。


この物語をカテゴライズするなら「終末モノ」になるんじゃないかと思います。
私が「終末モノ」と聞いてぱっと思い浮かぶものは『日本沈没』とか『エヴァンゲリオン』とか『コッペリオン』とか・・・
正直SFのサブジャンルという印象が強いですが、最近では『少女終末旅行』といった、いわば終末を受け入れた~終末での日常を描いた作品も増えてるんじゃないかと思います。本書は「SFの終末モノ」のようにそれらに大きな力を持って抵抗するような作品ではなく、異質な世界に生きる少年とその葛藤を描いた作品です。

杉井光さんの作品は他に『神様のメモ帳』を読んだことがありますが(こちらも名作ですのでそのうち書評を書きたいですね)、私が思うに彼はノスタルジーに描くことがとても得意です。私は文章が得意じゃないのでフィーリングで書いていますが、「秋空の都会に一人立ち尽くす人」を描写させたら杉井さんはとても良いものを書けるんじゃないかと思います。そんな日常のノスタルジーというか、寂しさというか、それがまた彼の物語をより一層引き立てます。

その情景描写も相まって、最後は沢山の人が乗っているバスの中で涙するほど切なく、感慨にふける事ができる作品に仕上がっています。


「わたしのこと、ずっと覚えてて。それなら、ばかなあなたにもできるでしょ。ずっとずっと、忘れないで」